経営革新計画の「新たな事業活動」は、業界初の革新技術である必要はなく、多くの場合「自社にとって新しいかどうか」で判断されます。既存事業の延長である「改善」か、事業の枠組みを広げる「革新」かの線引きが重要です。判断に迷う場合は、都道府県の担当窓口や商工会議所などに事前相談することをおすすめします。
「新たな事業活動」が曖昧なまま申請しても通らない
経営革新計画の承認を検討する際、多くの事業者が最初に迷うのが「自社の取り組みは新たな事業活動になるのか?」という点です。計画書の書き方を気にする前に、そもそも対象になるかどうかの判断を誤ると、審査段階で修正を求められたり、承認自体が遠のいたりします。
この記事では、経営革新計画における「新たな事業活動」の考え方と、現場でよく見られる誤解を整理します。詳細な基準は都道府県の公募要領や担当窓口で必ず確認してください。
法律上の定義をざっくりおさえる
経営革新計画は、中小企業等経営強化法に基づく制度です。同法では、新たな事業活動として大きく四つの類型が示されています。
- 新商品の開発・生産
- 新役務(サービス)の開発・提供
- 商品の新たな生産・販売方式の導入
- 役務の新たな提供方式の導入、その他の新たな事業活動
「新たな」と聞くと、世の中に存在しない革新的な技術が必要だと思われがちです。しかし、実際には「自社にとって新しい」取り組みであれば対象になり得るケースが多くあります。業界初や世界初である必要はありません。
「自社にとって新しい」という視点が重要
自社がこれまでに手がけたことのない商品・サービスや、まったく異なる提供方式への転換であれば、経営革新計画の対象として認められる可能性があります。たとえば次のような事例は、実務上よく検討されるパターンです。
- 製造業が自社製品のEC販売に初めて乗り出す(販売方式の転換)
- 飲食店が食品加工・卸売に進出する(新たな事業領域の開拓)
- 運送会社が荷物の保管・梱包サービスを新設する(新役務の提供)
- IT企業が自社向け業務ツールをSaaS化して外部販売する(新商品の開発)
大切なのは、既存事業の延長線上にある「改善」なのか、それとも事業の枠組みを広げる「革新」なのかという区分です。
「改善」と「革新」の線引き――よくある誤解
誤解①:機械を導入したら対象になる
設備や機械の購入そのものは、新たな事業活動の根拠になりません。その設備を使って何を新たに実現するかが問われます。同じ製品をより効率よく作るための設備投資は、多くの場合「改善」に分類されます。一方、その設備によって新しい品目を製造・販売するなら「革新」として認められやすくなります。
誤解②:売上が上がる計画なら通る
計画の数値目標(付加価値額・経常利益など)は審査要件の一つですが、数字が良くても「新たな事業活動」が明確でなければ承認されません。革新性の説明が弱いまま財務計画だけを整えても、審査官には刺さりません。
誤解③:新しい業種に進出すれば必ず対象
業種を変えることが目的ではなく、新しい価値を顧客に提供するかどうかが本質です。仮に同じ業種内でも、ターゲット顧客やサービス形態がまったく異なるなら革新性として評価されることがあります。逆に、異業種への参入でも既存の取り組みと実態がほぼ同じなら認められにくい場合があります。
判断に迷ったときの実務的な整理の仕方
自社の取り組みが対象になるか迷ったときは、次の問いを自分自身に投げかけてみてください。
- 「今まで自社がやったことがない」と言えるか?
- それによって顧客に提供できる価値が変わるか?
- 3〜5年後の目標数値(付加価値額など)と結びついているか?
三つすべてに「はい」と答えられれば、計画書に落とし込む素地はあります。一つでも「どちらとも言えない」なら、事前に都道府県の担当窓口へ相談することをおすすめします。
福岡での申請前に相談できる窓口
福岡県内では、経営革新計画の相談窓口として福岡県の産業振興部門や、商工会議所・商工会、よろず支援拠点などが対応しています。計画書の精度を上げるうえでも、書き始める前の段階で窓口に「この取り組みは新たな事業活動として認められますか?」と確認するのが現実的です。
相談の際は、現在の主な事業内容と、新しく取り組もうとしている事業の概要をA4一枚程度でまとめておくとスムーズに進みます。
「革新性」の説明こそ計画書の核心
計画書の書き方に悩む事業者は多いですが、審査担当者が最も注目するのは財務数値よりも「何が新しいのか」の説明です。自社の取り組みを棚卸しし、既存事業との差異を言語化する作業が、計画書づくりの出発点になります。
なお、具体的な審査基準や数値目標の条件は公募要領や担当窓口で必ず確認してください。県や市によって運用に差がある場合もあるため、早めの情報収集が承認への近道です。
よくある質問|経営革新計画の「新たな事業活動」
既存事業と新事業の売上比率に基準はありますか?
本文には具体的な比率基準の記載はなく、比率よりも取り組みの革新性の説明が重視される傾向にあります。詳細は担当窓口で確認してください。
過去に他社が同様の取り組みをしていたら対象外ですか?
必ずしも対象外にはならず、多くの場合「自社にとって新しいか」が判断基準とされます。他社事例の有無よりも自社実態の説明が重要と考えられます。
相談窓口に行く前に準備すべきことはありますか?
現在の主な事業内容と新しい取り組みの概要をA4一枚程度に整理しておくと、相談がスムーズに進みやすいとされています。